THE 倒産!


data-ad-client="ca-pub-4024971683053743"
data-ad-slot="4307782515">



22.「自信と慢心」

 

年が明け2004年になり、F社倒産後の本店への出店に向けて動きが本格化する。
倒産後撤退した建物で、地主さんによる改装工事をして数ヵ月というまだきれいな店舗だったので、厨房機器や店内備品がそのまま使えるという話だった。
出店における初期投資が少なく済むという判断もあっての出店決意だったが、いざ準備作業が動き始めると最初の話とは違うようなことが次々に起こった。
確かに倒産で被害を受けた債権者にしてみれば、お金になりそうなものは少しでも回収したいと思うわけで、当初使えると思っていたものが、諸々の手続きを取らないと使えなかったり、店内にあるものがある時気が付くと引き上げられていたり…と、できるだけお金を掛けずに開店しようと思っていた考えは、なかなか思うようにはいかなかった。
部分的には改装工事が必要だったのだが、これまでこうした改装の時にずっとお願いしてきた設計士さんがこの期間にちょうど遠方へ行っていて仕事が受けられないとのことだった。
手直しは一部分だし、知らない設計士さんでもこちらから注文を付けていけば何とかなるかと思って、建築会社さんから設計事務所を紹介してもらったのだが、この設計事務所が飲食店の仕事をそれ程多くやっている訳ではなかったらしく、あれこれと問題が起こりながら準備が進んでいった。
こうした何とかなるだろう…、という判断がまずもって間違いだったと思う。
前に営業していた店舗がダメになった場合、そこには必ず飲食店としての問題点があるもので、いくら店がきれいだからと言っても、手直ししないといけない部分が必ずあるはずだった。
そこを直さないまま、店名と外装を変えてオープンしても、やっぱりダメな部分はダメなのだ。
この店の場合、厨房スペースがいくつかに区切られているような作りになっていて、部屋が分かれているような厨房だった。
回転寿司だった店を無理やりに居酒屋として改装した店舗で、当初の建物に継ぎ足しで厨房を増やしていったのでこんな作りになってしまったようだった。これがまったくもって使いづらい厨房だ…とは自分も感じていた。
でも、飲食店においてはそこにいる人がすべて…という考えを持っていて、その場にいる人が頑張る意識を持ってやってもらえれば、そんな厨房の使いづらさは乗り越えてくれるだろう…と、人の教育さえしっかりとできれば、何とかなると考えていた。
難しい条件であれば、難しい方が面白い…とさえ、考えるようになっていた。
自分がやるのであれば大丈夫だろう…、という根拠のない自信がそこにはあった。
でもこれは自信という範囲を通り越した、慢心という心のエリアに足を踏み込んでいる自分が考える大きな間違いだったのだと思う。
自信とは、ある線を越えると、単なる慢心に変わっているのだが、それにはなかなか気付けないものなのだ…と、今になって思えば感じている。

 

それでも、従業員メンバーは素晴らしい人たちが揃い、素晴らしい体制でオープンを迎えた。
…しかし、この店舗のオープンが思いもしなかった方向へ向かって進んでいく扉を開けてしまったのだった。

 

 

(2014年11月28日発信)


HOME プロフィール THE 倒産! Message お問い合わせ