THE 倒産!


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33.初めての支払延期

 

2007年9月に入り、この年の年末商品おせち料理に関して、取り組みをどうするか動き出さないといけない時期になっていたが、自分の業務の中心は金融機関対策になっていて、どうにも動けなかった。
メインバンクへは日々の営業状況を細かく報告しながら、自分は資金繰り表とにらめっこをする毎日だった。
「総合センター」を閉鎖したことで、入ってくる売上額が減る。支払いは営業していた時の仕入を支払うので、資金繰りが苦しくなっている時に店舗を閉めると、次の支払時には必然的に資金ショートの危険性が出てくる。
大型SCの店舗は、売上を一時SC本社に納入して翌月に賃料と必要経費を差引いて自社の口座に入金される回収方法なので、この店舗の売上は先にならないと使うことができない。
このやり繰りの中で、9月末の支払時にお金が足りなくなりそうな状況を感じていた。
売上の高い日が続けば何とかなるかもしれないが、予測される売上額を計算して考えていくと、明らかに資金が不足しそうだったのだ。
いろいろと考えた末、この9月末の支払いの一部を仕入業者さんに翌月の入金に先延ばしでお願いすることを決めた。
各仕入業者さんに連絡して、説明をして、お願いをしたのだが、こうした支払延期のお願いは会社として初めてのことだったので、事務職員からの連絡の後、それぞれの社長から自分への問い合わせが相次いだ。
こうした対応は、精神的に本当に苦痛だった。
状況を説明して、支払は遅れるが必ず入金することを約束して、今後はこういうことがないようにお詫びする。これを電話がかかってくる度に繰り返すのだ。
事務所の電話が鳴るたびに、胸が締め付けられるような感覚が繰り返された。
支払金の一部を遅らせるだけで、これだけ大きな反応が起こるのが怖くなった。
果たして、来月はこの遅らせた支払分をまとめて全部払えるのだろうか…。そうしたことを考えると体全体をを恐怖感が包み込み、呼吸が苦しくなるようだった。
夜の事務所で一人資料を作ったりしている時に、こうした恐怖感に襲われ、どうにもならないような気持ちになることが何度もあった。
それでも、こうした危機を乗り越えていくことで、人間としても、経営者としても強くなるんだ…と、自分に言い聞かせるようにしていた。
かつて、自社と少なからず関係のあったF社が倒産した時には、こうした仕入業者さんに対する支払いは3ヵ月先まで引き延ばしていたということだったが、自分自身この1ヶ月の先送りのお願いでこれだけ精神的に追い詰められていて、もうこれ以上はこんなお願いはできないと強く思っていた。

 

この頃の深夜、YouTubeで戦争時代の動画をむさぼるように見ていた。戦争の時代、多くの人が自分の命を懸けて愛する人を守ろうと戦った。特攻隊の映像を見ながら、この時代に命を捧げた多くの人たちの苦しみに比べれば、自分の苦しみなんて何でもない…と、そう自分に言い聞かせながら、映像に見入って当時の人たちの苦しみを思い涙していたことが何度もあった…。
自分も苦しかった…。
この時代の人の苦しみに比べることなんて本当に失礼なことだけど、こうすることで自分の心を奮い立たせるようにして、耐えていた…。

 

(2014年12月9日発信)


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