THE 倒産!


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44.申立前日

 

民事再生申立前日までに、弁護士事務所からスポンサー候補企業の話をいくつか聞かされていた。
自分に意見を求められたが、自分は店舗の営業を継続していくことができて、引き受けてくれるところがあればどこでも良かった。
弁護士事務所は、自分がスポンサー企業に残って業務ができるようにと考えて企業を探してくれているようだったが、自分はそれはどうでもよかった。
とにかく、できるだけ多くの店舗が営業継続できるようにと願っていた。
ただ、仕入業者さんとの取引の継続を考えると、同業で店舗展開している企業だとその企業の仕組みの中に組み込まれてしまって、現在の業者さんとの取引継続は難しくなるかもしれないとは思っていた。

 

2007年11月26日、月曜日…。民事再生申立書類提出前日。
昼間、自分はどこで何をしていれば良いのかわからなかった。
夕方、メインバンクに行くことになっているが、それまで何をすれば良いのだろうと思っていた。
自分に関係する提出物はすべて弁護士事務所へ出していて、後は裁判所へ行くその時まで自分がやることは何もなかった。
と言って、本社事務所にいるわけにもいかなかった。いれば、何かしらでこの段階では答えられないことを聞かれるかもしれない。
誰にも会わない方が良いと思って、あてもなく車で走っていた。
これから起こることに対しての不安が大きくて、苦しかった…。
このまま時間が止まってくれればいいのに…、と思っていた。

 

夕方になり、約束の時間にメインバンクを訪ねた。
翌日に裁判所へ民事再生申立書類を提出することを伝えた。
応対した決定責任者は驚いた様子で、「何故ですか?」と何度も聞いてきた。
「支援しようと思ったのに…!」とか、「どうしてあきらめたんですか!」とか、そんな言葉を繰り返し言われた。
自分は何も言わず、ただじっと頭を下げていた。
もうすべてのことを弁護士事務所に任せて動いていることを伝えた。
後で聞いたら、自分が金融機関を訪ねた直後に、この金融機関の経営者や幹部が何人も揃って両親の家へ押しかけたらしい。
そして、両親に対して自分に言ったことと同じことを繰り返し言ったということだ。

 

金融機関側の考え方が、実際のところどうだったのかはわからない。
自分が法的整理申立をするとは、本当に思っていなかったのかどうか…。
でも、両親の個人預金を会社借入金返済に充てて突然回収したり、自分に対してハッキリと「やるのであれば法的整理を…」と言ったわけだし、また会社がここまで追い込まれてしまった原因の一つである親族問題について、自分の心に突き刺さった痛烈な発言もあった…。
もちろん、この状態になってしまったのは経営者である自分の責任であり、自分が何をどう言われ責められようが仕方がないことだと思っていたが、自分の周りの人たちにその責任を求めたり、痛烈に批判されたことに対して、自分としてはそれなら金融機関が求める責任の取り方をするしかないと思い、最終的な決断に至ったのだ。
これが金融機関が望んだ決断だっんじゃないか…。自分に対して直接そう言ったじゃないか…。
それを今になって、何故…?どうして…?、と激しく言われることがわからなかった。
こういう事態になって、金融機関は、そんな追い込むようなことをしたり、言った覚えはない…、というアピールを示すパフォーマンスなんだろうかと思ったりもした。
この場では、自分だけでなく周りにいろいろな人がいるから、あえて大きな声でそれを主張しているのか…。だとしたら、ズルい…と、そんなことを思いながら、ただ黙って相手の言葉を聞いていた。
自分からは一切何も言わなかった…。
いずれにしても、自分は決断し、動き始めている流れは、もう止めることはできないところまで来ているのだった…。

 

 

(2014年12月20日発信)


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