THE 倒産!


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49.債権者説明会

 

2007年12月5日、水曜日。裁判所への申立から8日目…。
債権者説明会が開かれた。
弁護士から、自社の民事再生申立に至る経緯が説明され、その後で自分から謝罪の挨拶をさせて頂いた。
債権者の方々からの質問を受けたが、中には自分の申立に対する非難の声もあった。
こうした債権者への応対はすべて弁護士事務所が間に入ってくれていたので、自分はその場で話を聞いているだけだった。
自分としては、会社に関係する方々にかけてしまう迷惑をできる限り少なくしたいと思ってのギリギリの選択であり、決心だったのだが、それはなかなか理解してもらうことは難しいことだと思った。
中には、かなり以前から準備してきた計画倒産じゃないか!?との声もあった。
もちろん、こんな選択をせずにやり続けていくことが自分の責任となるので、責められることは仕方がない。
ただ、ひたすら受け止めていくしかないと思っていた。そして、店舗の営業を継続し、今後の取引を継続していくことで、許していただきたいということをお詫びの中で訴えた。
決して、自分が持てるものを持って逃げてしまおうと思ってやったことではないし、計画的に考えて準備していたことでもない。
だから逃げるつもりはないし、ずっとこの地でこれから先も生活していこうと思っている。
店舗を残して、従業員の雇用や取引先の皆さんとの取引を続けていくために、今ここでこの選択をするしかなかった…、ということを一生懸命に話した。

 

説明会が終わり、出席していた債権者の方々を送り出した後会場に戻ると、数人の取引業者の社長さんが会場に残っていて、自分の姿を見つけると近付いてきた。
何を言われるのか…、と心配だった自分に、「大変だったでしょう…」と年配の社長さんが笑顔で自分の肩に手を置いた。
この社長さんの会社の債権額もかなり大きかった…。
残っていた社長さんたちは、自分のこれからのことを心配してくれていて、こんな言葉を自分にかけるために残っていてくれたのだと思うと、申し訳ない気持ちで涙が出そうだった。
ある社長さんは、「長い間取引をしてくださって、ありがとうございました…」と、改まって頭を下げられた。
こうして残ってくれていた方々は、会社が変われば取引はしないという気持ちでいるようで、自分に最後に声をかけて行こうと、申し合わせて残ってくれていたとのことだった。
こんなことにしてしまった自分に対して、最後にこんなに気を使ってくれて、何と言葉を出したら良いのかわからなかった。
自分の決断は、こうした多くの方を裏切ったわけだ。
様々な想いが頭の中で動いているのだが、ゆっくりお詫びをする間もなく、自分は弁護士事務所の方々に急かされるように、次の場所への移動を促された。

 

この時に会場に残って自分に声をかけてくださった方々…、この方々にもこれ以降会っていない。
実際、あの時から7年が経った今だが、この当時に仕事上で関係があった方々に対して自分から連絡を入れることは一切していない。というよりも、今でもそれができない…、と言った方が良い。
あの時の自分に対する心配そうな笑顔と温かい眼差しは、自分の心の中に今もハッキリと残っている。

 

説明会会場から移動した次の場所は、監督委員となる弁護士さんの事務所で、ここには後から再生スポンサーとして名乗り出ている企業の方々が集まっていた。
中には以前から良く知っている方もいて、何とも複雑な心境で席に着いた。
というのも、この段階ではすでに最初に手を上げてくれた企業A社と、営業店舗引継ぎについての進め方を決めていたので、ここまで来ていてこれをやり直すわけにはいかないだろうという状況だった。
それなので、A社が先に引き継ぐ営業店舗を決めた後に、残った店舗を別のスポンサー企業で検討していくとなったが、条件的には後から名乗り出た企業さんの方が良いのではないかと感じる部分もあり、何とも複雑だった。
A社は利益が出ている店舗だけを引き継ぎたい意向だったので、利益店舗が取られた後の赤字店舗が残る中からは、どうしても引き継がれない店舗が出ることは確実で、複雑な心境とはここからきているのだった。
この場に来ていた知り合いの社長さんからはその後直接連絡があって、先方の本社まで行き話をした。営業店舗を全部まとめて引き継ぐとのことで、自分にとってもこれは本当にありがたいことではあるのだが、すでに自分の意思ではどうにもできないということを伝え、弁護士事務所と相談してくれるようにお願いした。
こうして営業店舗の引継ぎに関しても、様々な人との関係がからんで、毎日いろいろな人に会い、心も身体も疲れ果てる日々が続いた。
とにかく動き始めてしまったものは、もう止めることはできない。
毎日起こる出来事をその場その場で受け止めながら、先へ先へと進んでいくしかなかった。

 

 

(2014年12月25日発信)


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