倒産社長!再起への「道」!!


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「私の高校時代…。」その11

自分にとって初めてのボクシングの試合。
これまで隣の学校のボクシング部で練習してきた自分が、この隣の学校の選手との試合になって、自分のセコンドには誰が付くんだ?…という問題になった。
結局、自分に力を入れて指導してきてくれた先生が一人付いてくれることになった。
学校にボクシング部がない自分はユニフォームがなく、セコンドに付いてくれる先生が「昔、俺が履いていたトランクスだ…」と言って、トランクスと試合用ランニングシャツを持ってきてくれた。
「俺の汗と血と涙がしみ込んでいる…」と言って手渡されたトランクスに、自分も気合を入れ直した。
試合前日、高校ボクシング界における大先生と言われる県の重鎮である方が自分に、「先に当てれば面白くなるから…」と声を掛けてきた。
県内でも強いと名が通っているT選手との決勝戦だが、この大先生が言うには「Tは打たれたことが少ないから、先に当てるんだ…」と言った。「いいか、先に打って行け。いきなり右とか…」というアドバイスと、自分に期待している…、というようなことを言われ、自分は更にその気になって覚悟を決めた。やる以上は、絶対に勝ってやる!と思った。
全階級の決勝戦が行われる日曜日、朝から誰とも話さなかった。この日、どうやって会場まで行ったのかも覚えていない。
記憶に残っているのは、会場となっている高校の控室になっている教室での試合準備の時…。
先生から「俺のトランクスだ」と譲り受けたトランクスが、あまりにも古いのでどっちが前か後ろかわからなかった。
このトランクスを履いて、グラブを付けてもらって…、試合順が来て体育館のリングへ向かった。
直前の試合のセコンドに付いていた先生とリング下で合流して、「いいか!止まっちゃダメだ!」との大声と同時に両頬にビンタをもらって(←今で言う暴力ではないので、念のため…)、自分も「ハイ!」と気合の返事を返し、リングへ上った。
会場に「只今から、ライトフライ級決勝戦を行います…」というアナウンスが流れた。
全身の血液がググッと頭に昇っていくような感覚があって、高揚していく気持ちが自分でもよくわかった。
「絶対に勝つ!」という気持ちを視線に込めて、相手コーナーのT選手を睨んだ。
その時、リングの自分を見ていたセコンドの先生が、「おい!!」と声を発した。

先生がリングに入って来て、「トランクスが逆だ!」と言って、自分の履いているトランクスを指さした。
後ろか前かわからなかったトランクスは、どうやら裏表逆に履いてしまったようで、その場で履き替えることになった。
グラブを付けている自分は、自分で履きかえることができず、先生の肩に手を置いてトランクスを脱がせてもらい、裏返してもらったトランクスに改めて足を通す…という、そう、おしっこをもらした子供が、パンツを履き替えさせてもらう時のあのスタイルでトランクスを履き直したのだった。
決勝戦の緊迫した雰囲気の中、今まさにゴングが鳴ろうとしたその時、今でも思い出すと赤面してしまうような大失態を演じてしまったのだった。

 

リングサイドにいた人たちの何人かが、クスクスと笑っていた姿が脳裏に残っているような気がするのだが、どうだったのか…?

 

 

(2015年11月12日発信)


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