THE 倒産!


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社員さんの姿を見に…。

今日は午前中に会計事務所へ行った。
去年から営業店舗はすべて譲渡して、会社としての収入はない状態なのだが、会社の事業期の途中だったので、何もしないでいると自然とそれ以前の売上を基に消費税の予定申告となり支払いをすることになってしまう。その額は数百万円になる。
現状、債権者に配当をした後なので、この額を支払うと会社に残る現金がほとんどなくなってしまう。
仮決算をして申告すれば、この支払いをしなくて済むということだったので、税理士さんにお願いしたのだがお正月明けで申告が間に合わず、結局前期の売上に基づいて消費税の支払いをしないといけなくなってしまった。
まあ、この後仮決算の申告をすれば、支払った分は返ってくるようなので、最終的には戻るお金なのだが、それでも精神的にはちょっとショックだ。

 

で、会計事務所へ行った後、ふと思い出した。
数年前に退社した社員が今勤めている「ラーメン屋」…。
ちょうどお昼だったので、行ってみた。

 

4年前、会社の経営状態が厳しくなっている中で、売上ボリュームの低いラーメン店を、売上が見込める回転寿司店に改装した。
この時に、ラーメン店に勤務していた社員は全員回転寿司店へ移ってもらうことにした。
ラーメン店一本で20年勤務してきたベテラン社員さんにしてみれば、それは解雇を告げられたのと同じ意味だ。
自分としても、新しい業態で頑張ってもらうというよりも、辞めて頂くことを考えての通達だった。
会社として社員に解雇を告げるといろいろな意味で影響が出ることがある。
絶対に拒否したくなるような異動を告げて、本人に退社を決意してもらう…。よく聞く話ではあるが、自分も正直その時にはそう考えるしかなくなっていたのだ。
ベテラン社員さんは、新しい業態でしばらく頑張っていたが、やがて退社を申し出てきた。
ホッとした…と同時に、ひどいことをした…という自己嫌悪の気持も出た。

 

あの時退社したベテラン社員さん…。
今勤めている店のことを耳にして、機会があれば行ってみよう…と思っていた。
その店のことをふと思い出したのだ。

 

店の駐車場に車を停め、店の外から彼の姿を確認したがわからなかった。
ここでその姿を確認できたら、おそらく店には入らなかっただろう。
元気な姿が見れれば、それでいいんだ。
店に入って、いざ顔を合わせるのは気が引ける。

 

…実はこうして昔の社員さんの姿を見にいくことはよくあるのだ。
姿を見つければ、店には入らない。
いつもそうだ…。
面と向かって、なかなか顔を合わせられないのだ…。

 

今日は、その姿が確認できなかった。
このまま帰るのも何なので、店に入ってみた。
席に座って、注文を考えていると、厨房の奥の方からなつかしい声が聞こえた。

 

「ありがとうございました〜!」

 

自分の座った席は、ちょうど厨房から死角になっていて姿は見えないのだが、その声だけで彼の姿が目に浮かんだ。
他の従業員さんはあまり声を出していなかったが、その後彼の声だけがひっきりなしに聞こえてきた。

 

「いらっしゃいませ〜!」「ありがとうございました〜!」

 

自分の店では、お客様に対するこの二つの挨拶は、何をやっていようが全員が声を出すようにうるさく言ってきた。
…今でも、それを実践しているんだ。
…その声を聞いていて、何だか胸が熱くなった。

 

ラーメンを食べて、会計を済ませ、店を出て…。
店の外から彼の姿を探した。
調理をしている彼の姿が見えた。

 

元気そうだった。
…頑張っていた。

 

その姿を見て、安心した。

 

…ジーンとした。

 

あの時、彼はどう思っていたのだろう…。
家のローンがあることも知っていた。
子供が大きくなって、ますますお金がかかる時期だというのも知っていた。
でも、その時はそうするより他にできることが思いつかなった。
ひどい…、と思っただろう。
考えれば、自分は多くのメンバーの方々にひどいことをしてきたのが現実だ。

 

どうか、みんな元気に頑張って欲しい。

 

しばらく、店の外からそんな彼の姿を見ていた…。

 

 

(2009年2月4日発信)


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