THE 倒産!


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作った者の想い、取られた者の気持ち

携帯着信に、懐かしい名前が…。
倒産した自分の会社時代にお願いしていた店舗の設計士さんだ。
「…いやあ〜、お久しぶりです」と電話に出た。
何でも、携帯のデータが消えてしまって、今まで一度も連絡できなかった…ということを言われ、今回の電話も厨房機器会社の社長さんに聞いて自分の電話番号を教えてもらった…とのことだった。
用件は、今店舗を引き継いで営業している会社から、店舗図面のデータが欲しい…と言われ、そのデータを渡しても良いかとの確認だった。
もちろん、店舗はその会社のものに変っているので、自分の意思は関係ない。
設計士さんとすれば、ずっと一緒に店舗を作ってきた当時の経営者に対して、「作った人」への気遣いだと思う。
わざわざ電話番号を調べて連絡を入れてきてくれて…、別に自分に確認することもなくデータを渡してくれたとしても良いのに…。

 

これまで作ってきた店を考えると、いろいろな部分に自分の“想い”があったりする。
何故、この部分を丸くしたのか…。
この屋根の形は何を意味しているのか…。
…数え上げればきりがない。

 

その都度、いろいろな“想い”を語りながら、設計士さんはそれを形にしていってくれた。
そうした“想い”を知っているからこそ、ただ単にデータを渡す訳にはいかないと思って、わざわざ調べて連絡をくれたのか…。
いずれにしても、ありがたいことだと思った。

 

自分は、人が作ったモノには作った人の“想い”が込められるものだと考えるタイプだ。
だから、撤退物件や所有者が変わった建物は、以前の持ち主の“想い”を大きく変えて新しい持ち主の“想い”を強く入れていかないとうまくいかない…と考える。
自分も撤退物件をあまりいじらずに店をやって、大失敗したことがある。
だから、持ち主が変わる時は、大きく手を入れて変えないと…。

 

実際に今、人手に渡った昔の自分の店舗や事務所の建物を見ると、今でも自分のモノ…ということを感じるのだ。
その建物の外観を大きく変えてくれないと、自分の“想い”で形作った部分がそのままである限り、自分の想いの方が強いように感じてしまう。
先日も、昔の本社建物の前を通った時、その建物の前で話している人の姿が目に入り、「あんないろいろ話しているけど、あの建物のあの部分が何故こう作ってあるかはわからないだろうなぁ…」と、…そんなことを考えていた。

 

取られてしまった者の心境って、こんな感じなのだ。
いつまで経っても、当時の自分の“想い”が見える限りは、自分のもののように思えてしまって、そんな自分の“想い”が見えるうちは、自分がいなくなってうまくいくはずがない…と思って見ているのだ。
そんなことを思われているのだから、新しくやる方は外観から変えてしまわないと、そんな昔の持ち主の“怨念”のような変なパワーが、知らない所からかけられて、うまくいかない…。
と、そんなことを思うのだが…。

 

まあ、こうして人の手に自分の物が取られて、初めて知った「取られた者の気持ち」だ…。

 

撤退物件や、既存店の営業を引き継いだ時は、外観から大きく変えないと…。

 

ということだと思う。

 

 

(2009年12月10日発信)


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