THE 倒産!


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17.会社を救った16歳…

 

2002年の夏から、会社を一本化しての立て直しへ向かう自分の戦いが本格的に始まった。
まず意識したのは、自分の考え方をハッキリさせて、それを全メンバーに自分の口から直接伝えること。
これから自分はどうしたいと思っているのかをしっかりと話そうと思っていた。
それを自分自身が本気で伝えて、それで理解できないメンバーが去っていくのは仕方がないと心に決めた。
もしかしたら誰も残らないかもしれない…、という不安もあった。
でも、もう一度集団の意識を一つにしないとどうにもならないと思っていた。

 

まず何とかしたかったのは、「すし伝説」だった。
開店前に自分の関わり方が中途半端になってしまい、社員メンバーとの信頼関係がしっかり作れなかった中でオープンし、その実績が思うようにいかなかったことから会社や自分に対する不信感が確実にあったと思う。
こうなってしまうと、反発心が個々の心の中に潜むようになっていて、こちらから何を言ってもその人には届かなくなってしまう。
こうした雰囲気が店全体にあり、店舗に行くとそんな重い空気を感じていた。
これでは、お客様に喜んで頂ける営業なんてとてもできない…。この店の空気を変えないといけないと思っていた。
店の営業を休みにして、全従業員を集めて話をした。パートさんも、学生アルバイトのみんなも、全員に集まってもらった。
これでメンバーの皆に自分の気持ちが伝わらなかったら、閉店撤退も考えていた。
自分はどう考えているのか…。今の現状…。これから自分はどうしたいと思っているのか…。
そして、個々に今思っていることを言ってもらった。
社員から順に一人一人思っていることを話してもらったのだが、みんな何だか警戒していて表面的なきれい事しか口にしなかった…。
そんな中で、16歳の高校生アルバイトの男の子が言った。
「俺は、返事をしてくれないと、ムカつきます…。」
確か、そんな言葉だったと思う…。
メンバーに対する不満だった。
この発言をきっかけに、皆がそれぞれの感じている不満をぶつけ始めたのだ。
パートさんから社員へ…。社員から会社、自分へ…。自分からみんなへ…。

それぞれが感じている不満を口に出すことで、それぞれの中にあったすれ違いに気付いていった。
本人はそんなふうに思われているなんて思っていなかったのに、相手にはそのように伝わっていたのだということに、それぞれが気付いたのだ。
自分が伝えようとしていることと、相手が受け取っていることは違っていたのだ。
結局は、仕事って人に喜ばれることを作りだしていかないといけないのだということはみんなが理解していて、それなのにほんのちょっとしたことで不満を感じてそれを態度に出してみたりして、その場の関係が壊れてしまったり…。
こうなってしまったら、人に喜んでもらえることなんて作り出せない。
みんなで不満をぶつけあってみたら、実はみんな同じように思っていることがわかった。
不満はちょっとした誤解から生まれていることに気付いたのだ。

 

…この時の光景って、今でも目に浮かぶ。
思いだすと、胸が熱くなる。
あの最初の一言を言ってくれた高校生M君は、この後店の中心メンバーとして活躍してくれた。
…そして、彼はその後患った病気で若くしてこの世を去ってしまった。
あの時、本当に彼に救われたと思っている。

 

この後、「すし伝説」はメンバー全員の信頼関係に基づく一致協力体制が全店に先駆けて確立され、それに伴って業績も飛躍的に改善されていった。
まさに、瀕死の状態から息を吹き返したように復活し、会社全体を支える店舗になっていったのだった。

 

 

(2014年11月23日発信)


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