THE 倒産!


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38.個人預金にロックが!

 

2007年11月12日、月曜日のこの日は全店の店長を集めた店長会議だった。
各店店長に、これから突入する年末の繁忙期に向けて、販促計画を発表し準備についてを確認する内容が中心だった。
この会議の間、自分の携帯に何度も妻から着信があったことが、会議が終わった後に着信履歴を見て気が付いた。
折り返しで連絡を入れると、妻は「キャッシュカードでお金が降ろせない…」ということを自分に告げた。
ATMで何度やってもカードが戻ってきてしまう、と言うのだ…。
ちょっと考えて、まさか…と思った。
確認しようと思って、メインバンクへ連絡を入れた。
この状況を話して、確認して欲しいと伝えた。
しばらくして、メインバンクの決定責任者からの連絡が携帯に入り、手違いで自分の預金口座にロックがかかっていたのですぐに解除します…、と言われた。
手違い…?と思った。預金口座って、手違いでロックがかかるものなのだろうか…と。
実際のところ、どうしてこうしたことが起こったのかはわからない…。
自分は絶対に意図的にやったものだと思った。

 

この瞬間だった。自分の気持ちがハッキリと大きく振れた瞬間だった。
銀行の説明を電話で聞きながら、自分の頭の中ではまったく別のことがシュミレーションとなって動いていた。
「法的整理…」
すぐに先日話していた会計事務所の先生に弁護士事務所を紹介してもらい、連絡を入れてもらった。
翌々日に相談に行く約束をした。

 

翌日の11月13日火曜日は、某メガバンクとの交渉で東京へ行くことになっていた。
自分の気持ちは、法的整理するしかない…という考えに向かっていて、この某メガバンクとの返済条件の話し合いはもう意味はないと思いキャンセルしようと思ったのだが、とにかく一人で落ち着いて考える時間が欲しかった。
自社にいる限り、次々に入る連絡で一人になることなんてほとんどなくて、東京への行き帰りの中で一人考える時間が作れると思い、ただそれだけのために行ったような気がする。
東京で、某メガバンクへ行き、担当者と会って、話をして…、でも何を話したのか今振り返ってまったく覚えていない。東京から戻ってきた段階では、自分の気持ちは「法的整理」で固まっていた。

 

この数日前だったかに、街を歩いていた歩行者に上から何かが落ちてきて命を落とした…、というニュースがあったと思う。東京の街を歩きながら、自分にも上から何かが落ちてきたら…、なんてことを考えながら歩いていたことを覚えている。そうなれば、それが一番楽になれるのかもしれない…、とそんなことを思いながら歩いていた。
歩いている途中で、ふと思いついてATMで自分の口座から現金を降ろした。確か30万円だったかと思うが、出てきた現金を見てまだ自分の口座は使える…、と確認した。
でも、これがいつ使えなくなるかわからない。
その前に、全額降ろしてしまおうか…と考えたり、でもそれをやろうとしたらその段階で自分が会社の整理に動こうとしている考えがわかってしまい、そうなれば何が起こるかわからない…、そんな様々なことを考えながら口座から降ろした現金を上着の内ポケットに入れた。

 

この時降ろした現金が、自分の口座から降ろした最後の現金となった…。

 

 

(2014年12月14日発信)


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