THE 倒産!


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52.自己破産、自宅競売。それから…。

 

経営者でなくなった自分は、2008年1月1日から、3店舗の営業を引継いでくれたA社に残って勤務をした。
引継ぎが落ち着いたら、自分自身は身を引こうと思っていた。
いつまでも過去の経営者が残っていたのでは、新しい会社もやりづらいだろうし、現場も混乱するだろうという考えがあり、いつ身を引くのが良いかずっと考えながら勤務していた。
自社の倒産処理が動く時には、自分がその場に行って立ち会わないといけないことが多いし、自社の処理が終わればその後には個人の処理もある。
日々、慌ただしくいろいろなことを考えながら、動きまわっていた期間だった。
それでも、会社の資金繰りの悩みから解放されたことで、気持ちは本当に楽になっていた。
こうして、1年間A社にお世話になり、自分はいよいよこの業界から身を引くことを決めた。
年末年始の店舗が忙しい期間が過ぎた2009年1月、自分はA社を正式に退社した。
これをもって、自分の外食産業に関わってきた期間が完全に終わった。

 

自社の倒産処理により会社資産がすべて処理された後、代表経営者である自分と、会社負債の連帯保証人になっている両親は、自己破産した。
これによって、自分と両親は個人資産のすべてを失った。
自分の自宅は競売にかけられた。
裁判所の競売物件資料のページに自宅の写真が載り、自宅内の生活感のある写真が公開されているのを見た時は、家族に対する申し訳なさで心が痛みつらかった。
競売にかけられていても、そこに住んでいることはできる。競売入札による買受人が決まった後、退居なり賃貸なりの交渉を買受人とすることになるので、それまでは今まで通りに生活ができ、競売になったからと言ってすぐに立ち退かなければならない訳ではない。
でも、競売資料の自宅写真に、子供たちの三輪車が写っているのを見た時は、子供たちに対して申し訳なくて涙を抑えることができなかった。
深夜に一人でこうした情報を見ながら、何とかならないか…と考えていた。
自宅が競売によって他人の手に渡った時に備えて、自分たちの生活も変えていった。
自宅の競売は、2009年春に行われた。
覚悟するしかなかった…。
この時、妻方の義父が競売に入札しようと準備をしてくれていることを知らされた。
嬉しかった…。もしかしたら…、と思った。
それでも、競売なので、もし義父を1円でも超える金額での入札があれば、自宅は他人手にわたる。
この義父の入札に一縷の望みを持ちながら、その時を迎えた。

 

2009年4月14日、火曜日…。
裁判所へ競売開札を確認に行った。
この時のことは、過去にBlogに書いたことがある。
10時から説明が始まり、10時半頃から競売事件番号順に開札結果の発表が始まり、11時9分に自宅の開札が発表されたとある。
この時の、発表されるまでの呼吸が止まりそうな緊張と、義父が買受人に決まった時の爆発するような喜びは、今でも鮮明に覚えている。
自宅での生活が続けられることの嬉しさで、しばらくは放心状態で身体が固まってしまって動くことができなかった。
こうして、自分の自宅での生活は続けることができた。

 

それから数ヶ月して、両親の自宅も競売となった。
この時は、自社とは関係がなくなっている弟が入札に参加した。
両親の自宅においても、弟が買受人に決まり、両親はそのまま引越すことなく生活が続けられるようになった。
認知症の父親は、話ができるうちはよく「この家で死にたい…」と言っていて、家が競売にかかる時には、父親の言っていたこの願いがずっと気になっていたので、本当に安心した。
この他にも、両親の自宅前の駐車場土地の競売の時は創業親族のおじさんが入札に参加した。
このおじさんとは、創業店を改革しようとした時に激しくぶつかり裁判騒ぎになったのだが、会社が倒産処理した後は事あるごとに自分たち家族のことを心配してくれていた。
このおじさんの入札は、残念ながら買受人にはなれなかったのだが、こうして自分たちの周りの人たちがいろいろな場面で力を貸してくれて、自分たちは生活を大きく変えることなく暮らすことができた。
かつて、会社の運営において激しくぶつかり合って、これが原因で会社が崩れていったとも考えられる創業親族の方々との関係だったのに、最後になって自分たちの生活を支えてくれたのはこうした方々だった。

 

自分自身は自宅で暮らしていけることが確定した後、2009年6月より介護施設での仕事を始めた。
この仕事に就く前は、ハローワークに通うという失業期間も体験した。
一時期、いろいろな場で若き成功経営者とか言われてチヤホヤされていた自分が、わずか数年後にハローワークで順番待ちをするという現実を体験した。
ハローワークの利用者を集めた失業保険の説明講習会の講師で来ていた労務管理事務所の社長さんが知り合で、お互いに「えっ…!」という感じになって、気まずかったり…、ということもあった。

 

本当に様々な体験をし、様々なことを感じた…。

 

 

(2014年12月28日発信)


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