介護生活 119番！

認知症の高齢者の男女に、恋愛意識はあるのか…？
…というのも、今自分が管理者をしている施設を利用する90歳のおじいちゃんと、70歳代のおばあちゃんが、仲が良いのだ。
二人とも、かなり認知症が進んでいて、普通の会話はできない。
お互いに「アー…」とか「ウー…」とかしか話せないのだが、二人で手をつないで歩いたりしている。
月に一度、ほんの数日間だけ利用が一緒になるのだが、先月も、先先月もそんな様子が見られていた。
今月も月曜日から一緒なのだが、会った時から再会を喜ぶような様子で、二人で手をつないでいた。
おじいちゃんなんて、歩行が不安定で、すり足でヨチヨチとやっと歩くような状態なのだが、二人でいきなり歩き始めた。
どうなのだろう…？
見ていると、まるで恋人同士…。
周りにいる他の利用者さんから「老いらくの恋だ…」なんて、言われたりしているのだが、当人たちはそんな意味なんてとてもわからないし、耳が遠くて聞こえない…。
職員も、どうしようか…と思っていたのだが、年齢も年齢だし、体もそんなに動かないし、特に問題が起こるでもなさそうだったので、様子を見ていた。
実に仲が良かった…。

が！そんな仲良しだった二人に、突然亀裂が！？
今日になって、おばあちゃんの方がまるっきり無視してるのだ。
それも、その表情は、明らかに怒っている感じ…。
そんなおばあちゃんに、90歳のおじいちゃんがあれこれと声をかける。
声をかける…と言っても、「ウー…」とか、「アー…」とか、なのだが、そんなおじいちゃんを、冷たく無視しているおばあちゃん…。
そのうちに、立ちあがって自分の部屋に行ってしまった。
そっと部屋を覗くと、怒った顔で布団にもぐっている。
…？
一体、何があったのだ？
普段から、会話ができない二人なので、話しかけても訳がわからない。
その後も、今日一日、二人に会話(？)はなかった。
おじいちゃんは、ちょこちょこと話し(?)かけ、おばあちゃんはそれを怒った顔で無視し続けた。

いやあ、その二人の様子は、まさにけんかをした恋人同士のような感じなのだ。

ああ、どうしよう…。
明日、このおばあちゃんは退所になる。
月に1回だけ来ているおばあちゃんで、来月はいつも通りに利用するかわからない。
8月からは、有料老人ホームになるので、二人は会うことはなくなる…。
年齢を考えると、明日が二人が会う最後の一日になるのかも…。
ケンカしたようなこのままの別れで良いのか…？

でも、本当に何があったのだろう…？
90歳のおじいちゃんが、ちょっかいを出したのか？
何か無茶をしたのか？
本人に聞いてもわからないので、想像するしかない…。

まさか…！？

（2010年6月16日　発信）